早めに仕事を切り上げ電車に乗ったら、車内は帰宅ラッシュで混雑していた。普段はこんな時間に帰れることはまずないが、今夜は妻と約束があった。結婚10年目の記念日。予約してあったヒルトンのレストランに来ると、妻の方がまだだ。共働きだし、お互いの事情を理解している、分かってはいるが、つい感情的になりそうになる。「今日は特別な日というのに…」と思い始めた頃に妻が到着した。

僕も妻も、例によって仕事の愚痴をこぼし始める。最近はいつもこうなる。そこにちょうどシェフが来て、今夜のスペシャルメニューを紹介してくれた。それを皮切りに、絶妙なタイミングでサーブされるプロフェッショナルな料理の数々。次第に、身も心も、そして二人の会話もほぐれていった。久しぶりに見る、妻のリラックスした微笑み。そうそう、あの頃はこうだった。いつの間にか僕たちは、10年前の恋人時代にタイムスリップしてしまったようだ。





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